2009年07月20日

宮台真司の本

宮台真司の本を2冊読んだ。
・日本の難点(幻冬舎)
・14歳からの社会学(世界文化社)
宮台真司を初めて知ったのは15年以上前、まだ雑誌の編集をやっていた頃に「創」という雑誌でブルセラブームの記事を読んだ時のことだった。
世の中の新しい出来事について、なんだかよく分らないけど、何かが変わりつつあると感じていることを、実に分りやすく説明できる人だと思った。


都立大学(今は首都大学東京というらしい・・・)の当時は助教授だった。
専攻しているのは社会システム論というもの。よく分らないが社会をシステム的に分析する社会学の一種といったところか?
朝まで生テレビでも一度だけ見たことがあったが、その他はNHK教育テレビのドキュメンタリー以外はほとんど出ていないらしい。
ちなみに私の担当していた雑誌でもほんの半年程度だが連載を書いてもらったことがあった。私が退社するせいでその連載は打ち切りとなってしまった(編集方針の対立する編集長が続行を認めなかった)が、宮台真司はすぐさま別の雑誌で引き継ぎ先を見つけて、その内容は後日単行本化された。
会ったことは一度もない。
最初に電話で原稿を依頼したら、ほとんど即答でOKで、その後は必ず締め切り前に電子メールで原稿が送られてきた。誤字脱字も一切なく、内容も完成されていて、こんな書き手ばかりだったら編集者なんていらないと思えるような仕事ぶりだった。

そんな私も今ではもうほとんど書店に足を運ばなくなった(編集者をやっていた頃は毎日1度以上書店に足を運んでいた)。
都心と違って田舎の本屋では、たまに行っても趣味のテニスの雑誌を立ち読みする程度。
この傾向は子供が出来てから、より強まった気がする。
もちろんインターネットの影響もある。
今回のきっかけは日経新聞の広告(日本の難点)を見たことだった。
あの宮台が「現代の日本(全体)を論ずる」という2つの興味対象をまたぐ情報に、これは読んでみよう、と思った。

「日本の難点」の中で、秋葉原殺傷事件について触れた箇所がある。
「格差よりも非包摂(排除)が悪い」
世の中がすっかり変わってしまっていることに気付かずに、親や教育界の時代遅れな「いい学校・いい会社・いい人生」という幻想に乗せられて、自分をダメ人間だと思いこんでしまった犯人。
自分はイケメンじゃないからモテないんだという勘違い(私も昔はそのことで真剣に悩んだことがあったが、周りをよく観察した結果、そうではないという仮説に行き着き、その仮説に基づいて行動してみたらあっという間に彼女ができた)。
ここでいう非包摂とは、自分は貧乏くじを引いたと思わせてしまい、そういう奴をほったらかしにしてしまう世の中の仕組みのことだ。
昔はしょぼくれた若者が居ても、体育会系のアニキとか、会社のお節介な先輩とかが、面倒を見てくれたものだったらしい。
ところが今の世の中はそうした存在からも「自由」でいられる。飲み会の誘いを断る「自由」。体育会に入らない「自由」。会社に入らない「自由」。生育環境が勘違いだった場合に、それを正してやるセーティネットがない。
これについて私のアイデアは、無料で入れるJC(みたいな団体)を全国に創ることだ。そこに入らない自由はやはりあるのだが、JCこそ、現代に生き残った数少ない体育会だと思う(良い点も悪い点も)。タワケなボウヤもJCのアニキを見ているうちに、自分の勘違いに気付けるような気がする。

「14歳からの社会学」は、中学生向けに世の中は実際はこうなっているんだ、ということを書いた本。
秋葉原事件の犯人も、こういう本を中学時代に読んでいればああはならなかっただろうに・・・。
社会の定義から始まって、恋愛のこと、幸せな仕事選びの仕方、死、自由、みたいなことが宮台流で語られる。巻末には宮台が中学生時代にハマったSF小説や映画まで紹介されていて、後の世代への愛がぎっしり詰まった内容。

私が宮台真司の文章が分りやすいと思うのは、どんな難しい概念を語るときでも必ず具体的な事例を交えて説明するところだ。カントとかアリストテレスとかハイデッガーみたいな門外漢がアレルギーを起こしそうな哲学者の考えた内容を、誰にでも分る言葉で話せる人は実に少ない。
私は正直難しい本は嫌いで、知識もそんなに持ち合わせていないので、専門書とかには絶対に手を出さない。だから宮台真司の本だけが、世の中の深層に切り込んでいく手がかりだった。

私が今一番興味を持っているのは、これから日本の中小企業はどうなってしまうのか?なのだが、「日本の難点」の巻末で述べられている処方箋はSRIやSRCといったシステム補正機能を発達させて、自由主義経済に環境保全や社会貢献などのバイアスを掛けてゆくことだったが、私の立場で提案できるのはせいぜい助成金を上手に活用することくらいか?
正直、中小企業にはちゃんとした人事制度もないし、新卒でなければ入れないというわけでもないので、格差問題なんか元々存在しない。デキる奴はちゃんと評価されるか、独立して同業他社を立ち上げるかのどっちかだ。
宮台は、経済的現実にそぐわない解雇規制は撤廃して、その分セーフティネットを充実させよと言っていた。いずれにしても社会保険の重要性は増すばかりだ。)ブログパーツ

kimmasa1970 at 03:06コメント(2)日々のできごと  

コメント一覧

1. Posted by 鯉太郎   2009年07月22日 23:01
初めまして、私も社労士をしておりまして、共感できる部分も多くたまにおじゃましています。

これからもちょくちょくお邪魔させてください。

立ち上げからしばらくは本当に大変ですよね、お互いがんばりましょう。
2. Posted by 社労士   2009年07月28日 02:09
お読みいただきありがとうございます。
立ち上げからしばらく経てば、大変じゃなくなるのでしょうか?
やっぱり早く人を雇わないとダメなんでしょうね・・・。

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