ポータブルポス
2007年09月24日
2007年09月23日宅配便大手「ヤマト運輸」が集配業務をするドライバーにサービス残業をさせていたとして、大阪南労働基準監督署から労働基準法違反(賃金未払い)で是正勧告を受けていたことがわかった。同社は勧告内容を認めており、「未払い賃金は支払う」としている。(以上、asahi.comより)
ヤマト運輸によると、ドライバーの労働時間は、商品の配達状況などを記録する携帯端末「ポータブルポス(PP)」で管理。ドライバーがPPの電源を入れた時を「出勤」とし、電源を切った段階で「退勤」としている。
同監督署が今年7月、大阪市内の集配センター2カ所に立ち入り調査した際、従業員計約40人のうち一部のドライバーのPP記録が、給与計算に使う「勤怠記録」の労働時間より長かったことが判明。従業員らに事情を聴いた結果、電源を入れる前や切った後に作業をしていたこともあるという。
同監督署は同月、同社関西支社(大阪市)に対し、集配センター2カ所の従業員について未払い賃金の支払いと管理体制を是正する改善報告書を10月末までに提出するよう勧告した。
ヤマト運輸広報課は「一部の集配所でタイムスケジュール通りに勤務をしなかったのが原因で、会社として指示していない。未払い額は調査中」としている。
ヤマト運輸がどういう体質の会社かは知らないが、あそこまで大手になると社員が勝手にサービス残業をしたという言い訳は通用しない。
現代の大手企業に求められているのは、「サービス残業を会社が強要しない」というレベルではなく、「社員が勝手にサービス残業をすることをも企業側が取り締まる」というレベルの労務管理だ。
平成13年の厚生労働省の通達【労働時間適性把握基準】によれば、
・管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者を除くすべての者について、
・使用者は労働時間を適性に把握する役務を有している、
とされており、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置についても
・使用者が自ら現認したり、
・タイムカード等の客観的な記録により確認したり、
しなくてはならないとされている。また、労働時間の管理の方法として自己申告制も法的に認められてはいるが、
・自己申告制の導入前に十分な説明を行うこと
・自己申告が正しいものであるかどうかを実態調査すること
などが義務づけられている。
今回の「ポータブルポス」による記録管理の方法は、限りなく自己申告制に近いものであり、従業員が「電源を入れる前や切った後に作業をしていたこともある」と証言していることからも、会社側の説明不足、管理不行届きは免れない。
会社側としては、社員が勝手にサービス残業したことまで会社のせいにされてはたまらない、というのが本音だと思うが、日本の労働基準法の考え方は今や「サービス残業を強要しない」というレベルではなく、「サービス残業をさせないように会社が管理する」というレベルを求めている。
労働基準法は労働者を守ることを目的とした法律なので、「強要しない」のレベルで十分ではないかという意見もあるが、労働者全体の立場から考えてみたとき、どちらのレベルがより労働者保護に厚いと言えるだろうか?
日本人特有の性質からして、自主的なサービス残業を会社側が放置すれば、必ずサービス残業を美徳とする風潮が社内に生まれる。いわゆる「みんながやっていることだから・・・」という感覚だ。そうした風潮が過労死やメンタルヘルス不全を引き起こすことが近年徐々に明らかになっていった結果、先のような通達が出されてサービス残業を黙認する会社を当局がビシバシ指導するようになったわけだ。
おそらく未だに「強要しない」のレベルで許されると勘違いしている方は多いと思うが、監督署の側は明らかに方針を変えてきているので、どうか同じ轍を踏んで社名にドロを塗ることのないように気をつけたいところだ。