家庭教師紹介センター

2008年05月01日

以前、行政協力の時に、ふとしたきっかけで昔話になったことがあった。
それはまだ私が大学生だったころの話。
当時の私は短絡的で、できるだけ時給の高いアルバイトをしたいと考えていた。
そこで、家庭教師をやろうと思ったのだが、当時は銀行や駅の黒板に電話番号を書いて募集をかけるというのが一般的なやり方だった。だが、いざ実際にやろうと思ったら、黒板は東大生の書き込みでいっぱいだった。
ズラッと東大生の書き込みがしてあるのを前にして、情けないことに三流私大の私は諦めてしまった。

今から思えば、東大生ばかりの書き込みの中だからこそ、三流私大の私が目立つ可能性は十分にあったはずなのだが、悲しいかな偏差値教育に長年漬け込まれてきた受験脳では、そのようなダイバーシティな発想の転換はきかなかった。

それはさておき、私は仕方なくフロムAをめくって、家庭教師派遣センターに応募することにした。(これも後から思えば、センターが私大生を派遣して生徒が集まるのだから、何も東大生でなきゃ市場に認められないとは限らないだろうに)
時給はぐっと下がって1500円。おそらく直接交渉すればこの倍はもらえただろう。
それでも楽してお金を稼ぎたかった私は、センターに登録することにした。
そして待つこと1ヶ月。ようやく私にも家庭教師の紹介が来た。
受け持ったのは杉並の豪邸に住む、中学2年生。
まったくやる気のない生徒で、とにかく人が見ていないと全然勉強しようとしない。
そんな奴放っとけばいいと思っていたが、立場上仕方なく見張り役を一年間務めた。

さて、そろそろ更新かと思っていた頃、いきなり新宿労働基準監督署から電話が掛かってきた。
「あなたの登録している家庭教師センターが倒産と同様の状態となりました」
慌てて銀行に走り、通帳記入してみると、先月の給料が入っていない!

その後、監督署の職員と何度か電話で話し、聞いた話では、このような場合には未払い給与の立て替え払い制度があるのだが、学生のようにその収入で生計を立てていない者は労働者とは見なされないために、立て替え払いの対象とならないとのこと。
楽チンな仕事とはいえ、働いた分のお金がもらえないなんて、そんなこと許されていいのか! この時踏み倒された金額は約5万円。学生にとっては大きな金額だ。

この時は何とかして社長から取り立てる方法はないかと思って、大学の法律相談室などにも足を運んだが、結局の所、社長が夜逃げしてしまっていては、どうにもならないということが分かっただけ。

諦めの悪い私は、労働基準監督署へも足を運び、直に監督官と会って話を聞いたが、学生には払えないの一点張りで、どうにもならなかった。

今だったら不服申し立てみたいなことも考えついたと思うのだが、当時はそんな知恵もなかったし、相手の監督官もそんなことまでは教えてくれない。
結局、納得がいかないまま、諦めるしかなかった。

と、そのような話を先日役所の人たちに話したところ、生計を維持してないとか学生だからといった理由で立て替え払いがされないなどということはありえないと言われたのだ。
まさか15年前に泣く泣く諦めていた古傷が今頃うずきだすとは思いも寄らなかった。
確かに道義的に考えてみれば、学生だからとか、生計を維持してないからといった理由で、労働の対価が軽んじられていいはずはない。
それはおかしいということで、私は15年ぶりに新宿労働基準監督署へ電話してみた。(つづく)

kimmasa1970 at 22:19 
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